私たちの生活に馴染みの深い飲み物のひとつ、コーヒー。
朝に飲めばシャキッとしますし、ほっとひと息つくときには欠かせない飲み物でもあります。
コーヒーに含まれる代表的な成分のひとつが、カフェイン。朝にコーヒーを飲むとシャキッとするのは、カフェインのはたらきによるものです。集中したい時などに飲む人も多いコーヒーですが、できるだけカフェインを摂りたくない、という人もいます。
例えば、妊婦さん。カフェインは体内で分解されるのに時間がかかるため、胎児にも届きやすくなり、胎児の発育を阻害する可能性があると言われています。そのため、妊娠中はカフェインの摂取を控えたほうがよいとされています。
また、カフェインには鉄やカルシウムの吸収を妨げるはたらきがあるため、貧血気味の人もカフェインを摂るのは避けたいものです。
カフェインに弱い体質の人もいますが、そんな人たちでもコーヒーを楽しめると人気なのが、
デカフェのコーヒーをご存知ですか?
デカフェとは、本来カフェインを含んでいる飲み物からカフェインを取り除いたり、カフェインの添加をおこなっていないもののこと。
通常はカフェインを含まないコーヒーを指しますが、お茶やコーラなどでカフェインを含まないものも発売されるなど、コーヒー以外の飲み物にもデカフェの商品が広がってきています。デカフェのドリンクを提供するカフェも増えてきていて、コーヒーを飲みたくても飲めない人にとっては嬉しい傾向ですよね。
そんなデカフェのコーヒー、いったいどのように作られているのか、知りたくありませんか?
実はその方が3つある、デカフェコーヒーの製法をみなさんにご紹介します。
デカフェのコーヒーを作るには
まず知っておきたいのは、デカフェのコーヒーは、淹れてからカフェインを取り除くのではなく、カフェインを取り除いたコーヒー豆を使って淹れる、ということ。コーヒー豆の段階でカフェインを除去するには、主に3つの方法があります。
■有機溶媒を使う
有機溶媒とは、通常は水に溶けない物質を溶かす、液体の有機化合物の総称です。
コーヒー豆には、水に溶けやすい成分と油に溶けやすい成分が含まれています。カフェインはどちらかというと油に溶けやすい性質を持っているため、有機溶媒を使ってカフェインを抽出します。
使われる有機溶媒は、「ジクロロメタン」という物質がほとんど。
このジクロロメタンにコーヒーの生豆を漬けてカフェインを抽出し、その後、生豆を加熱します。ジクロロメタンの沸点は約40℃と非常に低いため、加熱することで揮発します。こうしてカフェインを除去したコーヒー豆が作られます。
この方法では、カフェインを96~97%ほど取り除くことができます。しかも低コストでできるという利点があるのですが、カフェイン以外の成分まで除去されてしまい、風味が劣ってしまうというマイナスポイントも。また、化学物質を使うということに抵抗のある人もいます。
しかしながら、カフェイン除去の方法で最も歴史があるのが、こちらの方法です。
■水を使う
この方法は、コーヒー豆から成分を一旦抽出し、カフェインを除去した後にカフェイン以外の成分を豆に戻す、という方法です。
先ほど、カフェインはどちらかというと油に溶けやすいとご紹介しました。ただし、温度の高い水であれば溶けやすくなるという性質も持っています。
この方法では、温度の高い水に生豆を浸してカフェインを溶かし、抽出液を作ります。その抽出液から、先ほども登場したジクロロメタンを使ってカフェインを除去した後に、加熱してジクロロメタンを蒸発させて除去します。その後、残った抽出液に生豆を浸して、豆の中に成分を戻すのです。
この方法であれば、有機溶剤と豆が直接触れることはありませんし、カフェイン以外の成分が失われてしまうことも軽減できます。
ただし、有機溶剤だけを使うよりも手間がかかりますね。
■二酸化炭素を使う
そしてもうひとつが、有機溶媒(ジクロロメタンなど)の代わりに二酸化炭素にカフェインを溶かすという方法です。
二酸化炭素は、私たちも日常的に吸ったり吐いたりしている、自然界にある物質。
二酸化炭素は気体ですが、通常の気圧の120倍ほどの圧力をかけると、「超臨界状態」という状態に変化します。これは、気体と液体の両方の性質をあわせ持った状態のこと。
気体には拡散性、液体には溶解性があるため、湿らせた生豆に、超臨界状態の二酸化炭素を使ってカフェインを二酸化炭素の中に溶かし、圧力を元に戻すことで二酸化炭素が気体に戻ることでカフェインを除去することができます。
この方法であれば、カフェインをなんと99%以上も除去することができます。
薬品も使わず、自然界にある気体を利用するので、消費者である私たちからしても安心できる方法と言えますね。
「デカフェ」という言葉は知っていても、それがどのように作られているかは知らない人が多かったのではないでしょうか?
生豆の段階でカフェインを除去しているため、飲むときは通常のコーヒーを淹れるのと同じ方法で淹れればOK。特別な作業は必要ありません。
現在では、最初からカフェインを含まないコーヒー豆を作る研究も進められているようです。そうなれば、わざわざカフェインを抜く作業をしなくてよくなるわけですから、生産側にも無駄がなく、より手軽で私たちの生活にも浸透しやすくなりそうですね♪